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02 BM助産師がきく!海外出産体験談

今回は、【ドイツで逆子を出産】という体験談の後編です。

Be Motherの助産師が、ユカさんからお話をうかがいました。

前編では、もがきながら骨盤位分娩を受け入れる医師と病院をみつけたユカさん。

海外ならではの困難、ご本人とパートナーの決断力や行動力が突き動かした体験談の後編です。

こんにちは。海外での出産経験のあるユカです。

今回は今や珍しくなった、逆子の状態での出産、骨盤位分娩についてお話後編です。

2週間後の夜中、尿意でトイレに起きた私は何気なく、「あなたはいつ産まれるのかしらね」と赤ちゃんに語り掛け布団に戻りますが、その瞬間に突然破水。みるみるうちに、布団が濡れていき、不安が広がります。病院に急いで電話すると、逆子の場合は破水は危険(そのまま産まれてきてしまうと骨盤にひっかかる可能性がある)なので、救急車を手配して万全な体制で横になって病院に来るように言われます。

病院に着くと、まだ子宮口は2センチ。10センチないと出産出来ないということでとりあえず待機になり、部屋で待ちました。そしてその日の夕方から陣痛が強くなってきたのでいよいよ分娩室へ。骨盤位分娩ながら、無痛分娩を選んだのでいきむタイミングを何度か逃しながらも、破水から約30時間後、長女は産まれました。

産まれ方は、もう壮絶。骨盤位分娩はドイツでも今や対応出来る医師が少なくなっているので、研修医がぞろぞろと見学にやってきて、私のいきむタイミングをみてくれている助産師も骨盤位分娩に緊張しているのかとにかく大きな声で「今よ! もっと! 頑張って!」と励ましてくれました。

骨盤位分娩で難しいのは、産まれてくるその瞬間まで首にへその緒が絡まっているかどうかわからないことだそうで、絡まっている場合窒息の可能性があるので、どんなにベテランの医師でも緊張するそうです。長女はそのお尻が出てきた時に、へその緒が身体にまきついてはいたものの、首にはまきついておらず。大きなお尻をもぞもぞさせながら産道から降りてきたらしいです(私には見えていません。後で聞いた話です)。お尻を見た医師は、研修医たちに10秒くらいで何かを説明したかと思うと、突然そのお尻をつかんで反時計回りに赤ちゃんの身体をぐるん、と回し、スポっと私の身体から抜き取りました。通常の出産では、赤ちゃんが自分で産道を動いておりてくるのに対し、骨盤位分娩は赤ちゃんは受け身で動かないので、姿勢に問題がないことがわかったら、お尻を掴んで出してあげることが多いそうです。そうして産まれてきた娘。医師が研修医たちにまた何か言い、熱心にメモを取る研修医たち。そして私に「おめでとう」と告げて去っていきました。余談ですが、研修医たちが見学することに、事前にちゃんと同意しています。将来頑張ってほしいという気持ちを込めて、みせました(笑)

 

ふと見ると、大声で励ましてくれた助産師が泣いています。「良かった、本当に良かった」と言って産まれてきた長女を抱いていました。私が自分の出産が終わったことを実感したのはこの時でした。

 

横では出産に立ち会って、昨夜からほとんど寝ていなかった夫も大号泣。頑張って良かったと思った瞬間でした。

 

日本ではこの骨盤位分娩はリスクが高いということで、今では行われておらず、逆子は帝王切開をすることになります。もちろん、帝王切開を選ぶ方がリスクは低いので母体・赤ちゃんともにメリットはあると思います。私は帝王切開も骨盤位分娩も否定も賛成もしません。ただ、私の選択は帝王切開ではなかっただけでした。それでも、そんな私の願いを聞いてくれて一緒に駆けずり回ってくれた夫、産まれてきてくれた娘、受け入れてくれた医師と病院、一緒に叫んでくれた助産師には感謝の気持ちでいっぱいで、骨盤位分娩を選んで良かったと思っています。

 

皆さんの出産が、ご自分の選んだもので満足のいく出産であることを願っています。

ファッションリーダー

BM助産師のコメント

前編でもお話しましたが、日本においては、「産婦人科診療ガイドライン」を遵守し分娩介助がなされており、骨盤位の場合は、臀位(お尻が下にある)に限り、経膣分娩が可能となります。その際には、医師によるリスクの説明と本人の同意、さらに緊急時に備えて帝王切開の準備を整えた中で行うことが基本となります。

 

このように、国内においても医療者との十分な話し合いと準備が必要となる骨盤位経膣分娩ですが、ユカさんは言葉の壁を乗り越えながら、ご主人と共に主体的にお産と向き合い、万全の医療体制の中、無事に滞在国でのご出産をされたことに、スタッフ一同安堵しております。

 

出産場所(滞在国か日本国内か)に関するご相談や、海外にいて日本の医療情報や現状を知りたいというご相談も年々多くなっております。

外国で医療を受ける際、現地医療者とコミュニケーションを満足にとることは困難を伴いますが、様々なサポートシステムを活用しながらじっくりと検討し、皆様がご自身で納得のいく選択ができることを願っております。

 

壮絶な体験談の共有を、ユカさんありがとうございました。

ユカさんの粘り強さ、ご主人の支え、現地の医療従事者の気持ちと医療体制が融合し、ユカさんの望むカタチで無事出産できたことに繋がりました。

 

これからもBe Mother助産師がきく!シリーズでは、様々な海外体験談をうかがっていきます。

03

​次回海外出産体験談/米国編

近日公開予定

アメリカの旗
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