
06 BM助産師がきく!海外妊活出産体験談
今回は、【アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビで2人のお子さんを出産、子育て】をされた、マイコさんの体験談をお届けします。
Be Motherの助産師が、マイコさんからお話をうかがいました。
日本、カナダ、UAEの3か国で教員していたキャリアがあり、中東での出産子育てを経験されたマイコさんのストーリーをぜひご覧ください
ー自己紹介をお願いいたします
2005年から、カナダ人の夫とアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビ(ドバイに次ぐ第二の都市)に滞在していました。
当初は2年間滞在するはずが、結局13年となり、現在14歳と11歳の2人の男の子を出産、子育てを経験しました。
アブダビからドバイに引っ越しをして2年滞在し、2020年から現在は、長い一時帰国中、という状態です。夫はまだ海外です。
ー日本人からすると、なかなかイメージが湧きにくい中東での出産をされたわけですが、日本で産むことは選択肢にありましたか?
いえ、全くありませんでした。子どもの父親も一緒にいて、大変な時期を一緒に乗り越えることで意識の転換ができて、家族がユニットになりやすいと考えていました。
ー妊娠に至るまで、どのように過ごしていましたか?
妊娠前は、アブダビのインターナショナルスクールで教員として仕事をしていました。
職場の環境は良かったのですが、交通のマナーが日本とは違い、職場までの車の運転にストレスを感じることもありました。
また、暑い国だからか、エアコンが効きすぎて体が冷えることも負担になりました。
妊娠までは思いのほか時間もかかり、流産も2回経験しました。
そこで「子どもに集中しよう」と決め、天職と思っていた教員の仕事を退職しました。
でもすぐには妊娠せず、焦り、不安、嫉妬がありました。
芸能人の妊娠出産報告にさえ心乱され、そんな自分に自己嫌悪。
そんな中、妊娠する前に訪れたアフリカで知り合ったボランティア先の女性の言葉に救われました。
彼女も高齢出産を経験していた方でした。私の気持ちをシェアすると、こう言ってくれました。
"It's okay to feel that way. I felt the same way."
ありのままの気持ちを肯定してもらえて、自然とうるっときたのを覚えています。
罪悪感やコントロールできないことへの焦りから解放される瞬間でもありました。
ーこころに染み入る言葉ですね。妊娠中はいかがでしたか?
それから1年ほどで妊娠がわかり、同僚に聞くなどして病院を探しました。
サービスの質が良い私立の病院で、母乳のサポートがあることを重視しました。
また、外国人が多い国なので、ドクターがどこの地域、国で資格を得ているのか、どのような学会に所属しているのかも病院のホームページで調べました。
実は海外の医療の洗礼を受けたような出来事があったんです。
第一子の妊娠がわかった時にかかった古い病院で、子宮外妊娠だと言われました。
「すぐに手術したほうがよい」と言われたものの、夫が別の病院にすぐに電話をしてセカンドオピニオンを受けることにしました。
翌日、同じ病院の別の医師に診てもらったところ、何も問題のない通常の妊娠だということがわかりました。
ー夫さん、ナイス判断ですね!
はい、とても頼りになりました。
この時に、少しでも疑問を感じたら、セカンド、サードオピニオンを受けて、自分で選ぶことが大切だと思いました。
UAEの前にカナダに住んでいた時にも感じましたが、日本とは少し違って、医者と患者は対等な関係です。
医者任せではなく、自分がしっかりしていなければダメなんだと、身をもって学びました。小児科医も、経歴と口コミを調べて選びました。
ー出産についてはいかがでしたか?
第一子は無痛分娩で出産しました。
ただ、子どもの頭が大きくて会陰が裂けてしまったので、予後が本当にきつかったです。
第二子は自分で帝王切開を希望しました。
他国同様、入院期間は短くて、普通分娩で1泊2日、帝王切開でも2泊3日でした。
それでも、メイドさんのほかに、事前にニュージーランド人のドゥーラ(お産や育児のサポートの専門家)にお願いしていたので、とても助かりました。
第一子の時には、ドゥーラの方に出産時にも入ってもらいました。
母乳の出が悪く、痛みもあってとても苦労していたのですが、産後2か月目くらいまで定期的に来てもらえたのは、とてもありがたかったです。
ー産後はいかがでしたか?
長男はなかなか寝ない子だったので、自分が睡眠不足になることで、イライラしていた記憶があります。
今思えば、おなかがすいていたのかもしれません。
睡眠を確保しないと、思考も気持ちも落ちてしまうので、つらかったです。
また、情報に翻弄されていた時期があったように思います。
初めての子育てで、しかも海外にいると、「何が正解なのかわからない、でも聞く人がいない」という状況でした。
日本のやり方に従った方がいいのか、それとも海外のやり方がよいのか、また日本のやり方を医者は理解してくれているのか、といったことに頭を悩ませていました。
その時の私には相談先がなかったので、もしBe Motherさんのようなプロと話ができていれば、悩む時間、心労が軽減されたのではないかと思います。
ーお気持ち、よくわかります。逆に海外で妊娠出産して良かったことは何ですか?
子どもを通して、大切な仲間との出会いがあり、苦楽を共にできたことは自分の財産になっています。
病院主催の母親教室で知り合った出産日の近い友人とは、夜中に授乳しながら電話で話したりもしました。
子どもを通して出会い、密な時間を一緒に過ごした仲間たちと支え合うことができたおかげで、海外での出産子育てを乗り越えられたかな、と思います。
14歳の長男は、今でも世界各地に散らばっている友達と連絡を取り合っています。
また、海外に出てみると、例えば離乳食にしても産着にしても「これがよい」というものが一つではない、ということに気づけたのも良かったことです。
ーですよね!私もジャカルタに行って人生観変わりました。マイコさんは、海外でも教員をされていたというバックグラウンドが、子育てにも影響しているようですね。
はい。アブダビに行く前には、夫の出身地であるカナダに6年住んでいて、現地でも資格を取って教員をしていました。
アブダビのインターナショナルスクールには約80か国から生徒が来ており、様々な親子や教育のあり方を見てきました。
その中で、子どもの「根拠のない自信」がすべてのベースになると感じています。
「何があっても大丈夫」という自信を持つためには、親から愛されているという確信があること、つまり愛情が「伝わる」ことが大切だと感じます。
日本はどちらかというと「結果重視」の傾向があり、大人が否定することが多くなりがちです。
また「他人と比べての自分」を意識することになるので、自信を失ってしまう要素が多い印象です。。
一方、一般的に欧米の価値観では「過程重視」の傾向があるので、例えばニュージーランドの有名なラグビーチームでは、負けた試合でも、「ダメ出し」ではなく、「良かったこと」から振り返りをするそうです。
そして英語だと、学校に送り出すとき、寝る前といったタイミングで、毎日何度も「I love you」と言葉にし、ハグをします。
「自分はどんな自分であれ、認められて愛されている」そして「今は、成長過程なんだ」というGROWTH MINDを小さい時から感じていると、人と比べて優劣をつけることなく、間違いや失敗を恐れずチャレンジできるのではないかと思います。
ーここまでのお話をお伺いして、マイコさんのキャリア構築にも興味が湧きます。教員のお仕事は再開されたのでしょうか?
教員には戻っておらず、子育て期は私にとって「空白の10年」でもありました。
プレイグループで企画をしたり、子どもの学校でボランティアも経験しました。
ですが、その時は楽しかったものの「母としての自分」しかいないこと、「仕事をしていた自分」が失われていくことに、もどかしさも感じました。
年齢を重ね、子どもたちが大きくなってきて、「自分の更年期と子どもの反抗期のホルモンのせめぎ合い」も経験しながら、「子どもとコミュニケーションのパイプを築くこと」や「子どもが巣立った後の自分」についても考えるようになりました。
コーチングに出会い、いろいろな学びを深めたことで、反抗期の子どもとの関係も改善していきました。
これまでの経験を活かしてコーチングで「人生の転機に立つ女性が、迷いを成長の糧にして、自分らしく前に進むサポート」を日々しています。
今後は更に、学んだことを教育現場で使っていきながら、教員、親子のサポートもしていきたいと考えています。
強みを活かしてレジリアントに世界で活躍できる子を育てるサポートができたら嬉しいです。
ーマイコさんのように意欲的でいるために、アドバイスいただけますか?
コーチングを学ぶ中で、目標達成というのは「仕組み」だということがわかりました。
自分が「本当に手に入れたいこと」は何なのかを知ることがキーになると思います。
そこを自問自答して「決める」こと。
また「自分はそれを達成する価値のある人間だ」という認識を持てることがとても大事だと思っています。
ーありがとうございます!それでは最後に、これから海外で妊娠・出産を迎える皆さんへ、メッセージをお願いします。
新しい命を迎えることは、どこにいても大きな喜びと同時に不安や疑問もついてきますよね。
特に異国の地では、文化やサポート体制の違いに戸惑うこともあるかもしれません。
海外で生活する時間は限られていると思います。
日本と比べてしまうと、「あれもない、これもない」となってしまいがちですが、ぜひ「ある」にもフォーカスすることをお勧めします。
そして、将来帰国した時に「海外に出て、こんな出会いがあって良かった、こんな挑戦をしてみて良かった」と思えるように、一歩外に出て楽しんでほしいと思います。
また、「同じ境遇で作られたご縁」というのはとても強いと思うので、そうしたつながりを大切にしながら、「自分に厳しくし過ぎず、甘える」ということも心のどこかに置いて生活していけば、きっと楽しくなると思います。
自分らしさを忘れずに、どんなサポートが必要かをしっかりと見極め、Be Motherのような周囲のリソースを上手に活用してみてください。
一方で、日本人コミュニティの中で窮屈に感じることがあるかもしれません。
どうしても周りに合わせなきゃいけない場面もあるかと思います。
そんなときは、「無理に自分を押し殺す」のではなく、「どこまでなら心地よく歩み寄れるか?」を考えてみるのがおすすめです。
自分の大切な価値観を守りつつ、必要な部分では柔軟に対応できると、余計なストレスを感じずに済みます。
共感できる部分は受け入れつつ、違和感があれば無理に迎合せず距離を取る。
譲れないことは大切にしながら、自分のペースで、自分らしい関わり方を見つけていけば、海外生活ももっとラクに楽しめるはずです。
こうした経験や出会いは、きっと未来のあなたと赤ちゃんにとって素晴らしい財産になります。
未知の世界への一歩を踏み出す勇気を持って、ご自身の心と体を大切にしながら、新しいライフステージを楽しんでくださいね!

BM助産師のコメント
お話を伺って、Be Motherのnoteへ投稿しました。
ぜひご覧ください
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マイコさんのアブダビの妊活、出産、そして産後、さらにキャリアや海外生活のポイントまで貴重なお話をありがとうございました。
これからもBe Mother助産師がきく!シリーズでは、様々な海外体験談をうかがっていきます。
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